Educational Data Mining Conference 2017

対象シーン

    最先端の教育×ビッグデータ研究について知りたいとき

対象年齢

    高校生以上(英語の論文内容が理解さえできれば、何歳でも可)

実施費用

    約100,000円(学会費、宿泊費、渡航費)

 

皆さんは、EDMと聞いて何を想像しますか?

 

普通に今を生きる人であれば、もちろん答えは

 

ELECTRONIC DANCE MUSIC

 

だと思います。クラブで夜な夜なブンツカブンツカキュイーンドーンってやってるあれですね。

 

しかし、Faciliiでは、EDMは別の意味を持ちます。そう、

 

EDUCATIONAL DATA MINING

 

です。ビッグデータ時代の今、教育関連でもありとあらゆるデータが存在するため、それを分析したり機械学習のモデルを作ったりして、より学習体験を作っていこう、とう研究分野です。

 

このEDMの分野では、二つの主たる学会があります。

EDUCATIONAL DATA MINING CONFERENCE (EDM)とLEARNING ANAYTICS & KNOWLEDGE CONFERENCE (LAK)です。

こちらの論文で説明されているように、EDMは精度の高いモデルの構築やそこからで導き出される発見を重視し、LAKはそうしたモデルを使って人間の判断をより良いものにしていくことに重きを置いています。

さて、Faciliiは今回、以前紹介したグループワーク分析システムWhiteboxを発表するために、このEDMの方に参加してまいりました。

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今年の会場は中国のWuhan(武漢市)。湖北省の東部に位置する都市で、長江がつっきっています。中国人の友人らによるとさほど大都市ではないそうですが、人口は約一千万人。恐るべし。

学会は3日間開催され、毎日20本から30本の研究が発表されていました。

Educational Data Miningということだけあって、ほぼ全ての研究が機械学習のモデルの精度についてでした。

EDM学会も今年で10年目なので、関連研究より精度を上げた、という研究が多く見受けられました。

こうした研究は多くの場合、入力データとしてCoursera やedX等といったMOOCプラットフォームのユーザーデータを使っています。ユーザーが何回動画を再生したか、何回巻き戻したか、最後まで見たか、どこをクリックしたか、フォーラムでコメントをしたか、どのようなコメントをしたか、等といったありとあらゆるデータを使って、その生徒の学習度を数字で出したり、その生徒の達成度や卒業の可否を予測したりします。

面白かったのは、MOOCでの最終テストで複数アカウントを使ってズルをしている人をあぶり出す研究まであったことです。

残念ながら、Faciliiがやっているような、教室内やワークショップ内でのface to faceの環境でのデータを使った研究は未だほとんどありませんでした。

なお、EDM2017で発表された研究の論文は全てこちらにあります。

 

今回EDM2017に参加して感じたのは、主に以下の点です。

 

Where are the humans? Where are the users?

(対象となる人間が忘れられていないか?ユーザーが忘れられていないか?)

 

Predictionの精度が上がった、ズルしている人を摘発できる、より正確に生徒の学習度が分かる。
これらの研究に対して、ターゲットとなっているhumanはどう感じるのか?どこにメリットを感じるのか?それができて嬉しいのか?

こうした問いに対して、リサーチャーやscientistは答える必用はなく、デザイナーがやればいい、と思う方もいるかもしれません。

“Designers are experts on humans. ” 確かに、技術をどう使うのか、ひいてははそれを使っていて楽しい、心地よい体験を提供しようとするのはdesignerの得意領域なのかもしれません。
でも、こうした問いに対して、researcherやscientistは答える必用が本当にないのでしょうか?

そこにとても疑問を感じたconferenceでありました。

また、conferenceだから仕方ないのかもしれないですが、データの見せ方、発表の仕方など、いまいち心に響いてきませんでした。

自分の研究成果を、まるでshowかのごとく発表する、そんな超絶かっこいい研究者がもっともっと増えるべきです。

つまり、研究者が見せ方にも侵食していくべき。そうすれば、必然的にhumanの考慮もリサーチの中に入ってくるはずです。

そうしないと聞いているhumanへの説得力がありません。そして、これができるresearcherが増えていけば、きっと野球界のイチローのように、研究者という職業をかっこいいと夢見る若者も増えるのでは、と思います。

(故にLife Is Techの水野さんが「プログラミング界のイチローを作りたい」という点にも非常に共感します。)

 

余談ですが、Wuhanは、とても「人間くさい」場所でした。
地下鉄のドアが開いたら降りる人を待たずにすぐ乗る、暑いとTシャツをめくってお腹を出す、スピーカーで電話しながら電車に乗る、信号なんて従わずに渡れるから道路を渡る。
日本では「マナー」「礼儀」「一般常識」で抑制される部分を、露わにして良い場所。だから、とてもとても人間らしい場所だと感じました。

それはつまり、互いのことを全く気にもしていない、ということでもあります。とにかく、無関心なのです。

おおらか、というよりは、無関心。そう考えると、とても住みやすい場所でもあります。

だって、自分が何しようと、他人が何しようと、どうだっていいから。それって実はとても人間くさいこと。

「大人だから」「駄目だから」「失礼だから」そんなことはどうだっていい。そんな清々しい場所でした。

 

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さて、そんなこんなで、やっぱりいつでもどこでも海外にいくのはとても刺激的ですが、今回はっきりしてよかったのは、Faciliiが目指している未来がやっぱり素敵だということ。

Whiteboxに対して、education界隈のresearcher達はとても興味を持ってくれました。

それはきっと、シンプルで、使いやすくて、かつ魅力的だから。既にプロダクトとして販売しているのか?と聞かれ、open sourceだと答えたら驚いていました。
これはきっと、Faciliiの他の取り組みを見せても同じだと思います。
今までtechnologyしか入っていなかった、もしくはresearcherしか入っていなかったEducationの領域に、DesignとTechnologyを持って入っていって、シンプルで使いやすくて魅力的で、そして学習を最大化するような、もしくは先生やファシリテーターを心地よくアシストするようなデバイスを沢山作っていくことで、全ての人にとって学びをもっともっと素敵な体験にすることができると思います。

そして、同じように、自ら手を動かす、研究者でありエンジニアでありデザイナーなファシリテーターが増えることを、切に願っています。