対象シーン
参加者全員の発話を自然に促したいとき
対象年齢
中学生以上(自分の思考をメタ認知できるようになるのが中学生あたりからと言われているため)
実施費用
1ポットあたり約3000円(鉢、Leaf Thermometer、ジオラマ用土、造花、ケーブル類、Arduino、電子工作部品等)
最近滞っていたFaciliiのR&Dですが、実はこの作品に長らく時間をかけておりました。
グループワーク参加者の思考状態を葉っぱの動きと色の変化でリアルタイムに表現する植木鉢型デバイス「Meta Pot」です。
まずはこちらの紹介映像をご覧ください。
ファシリテーターをやっていてよく感じるのは、どうすれば参加者全員がディスカッションに参加するようになるのか、ということです。
本当は言いたいことがあるだろうに何も言わない照れ屋さんだったり、何かに不機嫌になった様子のムスッとさんだったり、理由はそれぞれあれど、グループで作業をしてもらうと、得てしてよく話す人と、あまり話さない人が浮き彫りになります。
前回の記事で説明した通り、チームワークという観点でみると、これは良くない状態です。全員が自由に思ったことを言える安心感を持ち、等しく貢献し合うことで、チームワークは最大化されます。
では、どうすれば参加者が、義務感ではなく、自らの意志で、もっと話すようになるのか。
この問いに対してFaciliiが出した答えが、Meta Potでした。
Meta Potは、心拍数の上昇と目の瞳孔の拡大という、二つの生体反応をセンサーを使って取得しています。
これは、ダニエル・カーネマンの研究に沿っています。彼は、1969年の研究で、人が難しいタスクに向き合ってるときに、タスクの難しさに比例して心拍数が上昇し瞳孔が開くということを発表しています。
つまり、Meta Potは、グループワーク参加者の思考の深さ、特に難しい考え事をしている状態を検知します。
そして、その思考状態を、葉っぱの動きと色の変化で表現します。
考え事にふければふけるほど、葉っぱは立ち上がり、そして黄色くなっていきます。
逆に、その考え事をやめれば、葉っぱは下がっていき、色も緑へと戻っていきます。
この動きと色の変化は、葉っぱの後ろにつけられたバイオメタルファイバーという形状記憶合金で実現されています。
バイオメタルファイバーは電気を流すと少し縮むため、その動力で葉っぱを持ち上げています。
具体的には、約70°の可動域があります。
また、縮むだけでなく、電熱線のように熱くもなるため、その熱さを利用して、サーモクロミックインクという、温度で反応するインクに変化を起こしています。
そして、これらのパーツやセンサーが全て、以下のようにArduinoというマイコンボードと簡単なプログラミングで制御されています。
(ソースコードも一応全てこちらにあげております。)
Faciliiでは、このMeta Potを実際にグループワークで使ってもらうという検証も行いました。
4人一組で、いくつかのお題について話し合ってもらう中で、このMeta Potがどういう変化を起こすか、という実験です。
その結果、Meta Potがあることで、平均的に参加者の発話率が均等状態に近付いた、という結果が出ました!
他にも、Meta Potがそこら中でピクピク動いていることによって、視線の矛先が上手く散らばり、普段は目がいかなかったようなタイミングで他のチームメンバーを見るようになった、ということや、無邪気な葉っぱの動きによって初対面同士のチームでも打ち解けやすくなった、等という発見もありました。
Faciliiでは何度も訴えていることではありますが、ファシリテーターは、ただワークショップを設計し、それが円滑に進むようにすればいいだけではありません。
そのワークショップで使われるツールを新たに設計し、それを検証するのも、もちろんファシリテーターの役割です。
更には、そのワークショップに参加する「人」について理解し、ワークショップ中で度々行われるチームワークという活動の仕組みについても理解し、それをより効果的に進めるための科学的論拠に基づく策も知っていないといけません。
ということで、FaciliiはこのMeta Potという新たなデバイスを大事に育みつつも、また新たなツールを沢山作っていきます。